伝統や文化を守る意義について

「伝統を守るべきだ、文化を守るべきだ」とよく言われますが、その理由について述べてみたいと思います。

人間は神の様に全知全能ではありません。従って、善悪の判断基準、つまり、真に何が善いことで何が悪いことかが分からない存在です。それ故、アノミー状態 (何をどのように行動してよいか分からない状態)に陥ってしまいます。そこで、何を拠り所として行動すればよいかについて、M・ウェーバーが「権力と支 配」という書物のなかで3つ示唆していると思います。(支配の3類型)

 

1つめは、「カリスマ的支配」です。各個人がどのように行動してよい か分からない場合、カリスマ性を持った人間が現れ、このように行動するのが正しい、といえば、人はその言葉を信じ、自らの行動に正当性を持たすことができ ます。教祖様のおっしゃることだから正しいに決まっている、みたいなケースです。

次に、「合法的支配」です。これは、予め多くの人が合意できるような手続きを決めておき、それに準拠して決定された法律や制度に違反しないように行動すれば、同様に正当性を持たすことができます。

最後は「伝統的支配」です。これが伝統や文化を守る意義にあたるのですが、先人達が残してくれた伝統や文化には、時代を越えて守られてきた理由があり、そこ には相応の ”正しさ” があるのではないかと思えます。そこで、そのような伝統や文化を参照すれば、誤った行動はしないだろうと思え、正当化が可能となります。

 

自分の行動に正当性をもたす(理由づける)ためには正統性(カリスマ、合法性、伝統)に依拠せざるを得ない、ということだと思います。

 

つまり、伝統や文化を守るべき理由は、僕たち人間は神の様に全知全能ではないため、自らの行動を正当化するための指針が必要であり、その指針の一つを伝統や文化に求めることができる、ということです。